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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens

Aozora Bunko

それまで、自分ほど賢い者は、江戸中にもあるまいと思ったのが、我儘な坊っちゃんの言い募る言葉に屈従する人達の姿であり、自分ほど立派な男はあるまいと信じさたのは、おべっかを忠義と心得た、卑怯な人達のお世辞を、鏡と没交渉に信じていたにすぎないことを、つくづくと思い当らせられる時が来たのでした。

貫兵衛は、恐ろしい失望と自棄に、気違いじみた心持になりましたが、間もなく、何万両という大身代が自分の自由になったことと、その何万両を散じさえすれば、お坊っちゃん時代の昔の夢を、苦もなく再現することの出来ることに、気が付いたのです。

あらゆるお世辞、――歯の浮くような阿諛を、法外な金で買って、貫兵衛は溜飲を下げました。色街の女達も、百人が九十人まで、小判をバラ撒きさえすれば、助六のように自分を大事にしてくれます。

行くところ、煙管の雨は降りました。家へ帰ると、女達の手紙を、使い屋が何十本となく持って来てくれました。やがて、金の力の宏大なのに陶酔して、貫兵衛はもう一度、それが自分に備わった才能、徳望のように思い込んでしまったのです。

それから十年の間、貫兵衛はあらゆる狂態をし尽しました。