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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
「何だ、水茶屋のお篠か、白粉っ気がなくなるから、お見逸れ申すじゃないか」
「まア、私、そんなに厚塗りだったかしら?」
お篠はそんな事を言いながら、自分の頬へちょっと触って見せたりするのです。笑うと八重歯が少し見えて、滅法可愛らしくなるくせに、真面目な顔をすると、屹とした凄味が抜身のように人に迫るたちの女でした。
「赤前垂を取払うと、すっかり女が変るな。一年近く見えないが、身でも固めたのかい」
「とんでもない、私なんかを拾ってくれ手があるものですか」
「そうじゃあるめえ、事と次第じゃ、俺も拾い手になりてえぐれえのものだ」
「まア、親分」
お篠の手がまた大きく夕空に弧を描くのです。
「ところで何か用事があるのかい」
「大ありよ、親分」
「押かけ女房の口なら御免だが、他の事ならてえげえ相談に乗ってやるよ、ことに金のことなどと来た日にゃ――」
「生憎ねえ。親分、金は小判というものをうんと持っているけれど、亭主になり手がなくて困っているところなの」
「ふざけちゃいけねえ」
「ね、八五郎親分、掛合噺はまた来年の春にでもゆっくり伺うとして、本当に真剣に聴いて下さらない?」
「大層またあらたまりやがったな」