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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens

Aozora Bunko

「八、何をぼんやりしているんだ。曲者は外へは出られないはずだ、出口出口は先刻の俺の声一つで、二十人の下っ引が固めている。手前は錦太郎を見張っているがいい。自棄になった曲者は何をやり出すか解らない」

平次の命令は周到を極めます。

そのうちに外科が来て、花嫁の傷を調べました。傷は深くはないが、急所をやられたので、朝までの命がむつかしかろうという噂が、誰からともなくパッと家中に伝わります。

手負を外科と主人に任せた平次は、花嫁の支度部屋から出発して、縁側へ、庭へと調べて行きました。この道以外は人目の関が幾重にもあったはずですから、どんな忍びの名人でも、人に見とがめられずには通られなかったはずです。

たった一つの手燭で、平次は実によく調べて行きます。生湿りの庭には誂えたように足跡があって、それがかなり大きいことや、突当りの木戸は外から簡単に輪鍵の外せることを見極め、

「いるか」

静かに声をかけると、

「親分」

木戸の外から応えた者があります。言うまでもなく下っ引の一人。

「誰も出た者はないな」

「ありませんよ、親分」

「誰でも構わない、外へ飛出そうとする者があったら、遠慮なしに縛り上げてくれ」