Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Read 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 150,635 characters · 306 screens
忠興は、彼女の咽び方が、余りに激しいので、這入ってきた入口のふすまを閉めに戻った。そして、妻のそばに坐り直すと、
「よいか、人目につかぬ夜のうちがよかろうぞ。郎党には米田金八郎・何児小左衛門・岩成兵助の三名を付人としてつかわすほどにな。……山の尼院へ」
泣き涸れて、力なく顔を擡げると、彼女は、嗚咽を嚥みながら云った。
「和子さまは。……与一郎様のお身は? ……。わたくしに、お預けさせていただけましょうか」
忠興は、黙って、顔を振ったが、とたんに、その眼からぱらぱらっと涙が散った。
「逆臣の娘に、忠興が嫡子を、何で渡されようか。ならぬことだ! ……、そなたは身一つだ。己れの生命をこそ、愛しめ!」
「……なりませぬか」
唇を噛み直して、わなないた。――凄愴な決心がその顔いろをさっと染めた。
「では……では。……死ぬしかございませぬ。和子さまが、わたくしの生命ですから」
「だまれッ!」
忠興は、発狂したように呶鳴りつけた。声と一つに起っていた。
「兵助っ。金八郎っ。――支度はいいか。奥方を……いや迦羅奢を、すぐ用意の山駕にうつせ」
庭面で、付人達の返事がした。迦羅奢も、今は取り乱して、