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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens

Aozora Bunko

悪病のために爛頽れた皮膚を見せまいための繃帯であろう。

「ああ、この手も可愛いかな? いつも付けている中将の仮面、泣きも笑いもしない木の能面、仮面の奥の俺の顔! この顔も可愛いかな?」

云い云い顔を突き出した。仮面の色は鉛色である。それは白が古びたからで、一抹黄味を帯びている。薄い茫々とした八字眉、眉の下の淋し気な皺、少し垂れた魚形の眼、眼の真ん中に瞳があり、そこに穴が穿たれている。その穴から覗くのは、炭火のような赤い光で、悪病のためにいつも熱ある纐纈城主の双の眼である。少し小鼻が根張ってはいるが尚形のよい真っ直ぐの鼻、半分開いた歯を見せた口、鼻の下の薄い髭、スット憔けた寂し気な頬など、中将の仮面は穏かで且つ優雅ではあったけれど、それがかえって物凄かった。そうして非常に不自然であった。

「妾にはいつもご城主様が可愛く思われるのでございます」――城主の愛妾は顫え顫えそれでもようやくこう云った。

「水泡よ」と城主は嘲けるように、「そうして今夜も可愛いかな?」

「はい、さようでございます」

「いやいや今夜は憎い筈だ。何んと水泡よ、そうではあるまいかな?」

城主は肩の辺で笑ったものである。