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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
絹糸のような軟い調子で相手の若者は綾すのであった。
纐纈城の一室である。
「ああ違うとも、全然違うよ。俺は大いに迷惑だ」
「まあまあご辛抱なさりませ」
「うんにゃ、出来ねえ、これ以上はな! おい早く何んとかしてくれ」
「で、どうすればよろしいので?」
「俺の従兄に逢わせてくれ」
「何んというお方でございましたな?」
「土屋庄三郎昌春だ」
「ははあ土屋様? 庄三郎様で?」
「うん、そうだ。早く逢わせろ」
「はてね、城内におりますかしら」
「いる筈だ。いる筈だとも、そう云って俺を連れて来たんだからな」
「で、誰が申しましたかな?」
「船頭どもだ。三人のな。赤い袍を着た船頭どもだ」
「そうしていつ頃でございますな」
「十日以前だ。いや十二日になる。そうだそうだ。十二日以前だ」
「どこでお逢いになりましたな?」
「よく色々訊くじゃないか。……本栖湖の岸だよ。本栖湖のな」
「で、本栖湖はどっち側で?」
「ええ五月蠅え! こん畜生! つべこべ云わずと早く逢わせろ!」
しかし若者は相も変らず絹糸のような軟い調子でニヤリニヤリと笑うのである。
「まあまあご辛抱なさりませ。ご辛抱が肝腎でございますよ。