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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
そんな放れ業が出来るものか。それにそんな怨みもねえ」
「怨みはなくとも手柄になる。日本第一の豪の者、世間から折り紙を附けられる。故主へ帰ればお取り立て、一万二万の知行になる」
「駄目だ駄目だ」と薪兵衛は、不器用に左右の手を振った。
「第一俺は帰参して、知行を貰おうとは思わない。今の身分で結構だ」
「ふん」と陶器師は鼻を鳴らした。「十人の泥棒の頭でか」
「だがお前よりは偉い筈だ」
「なるほど、俺には手下はない」
「一人ぼっちとは気の毒なものさ」
「俺には俺の考えがある」
「聞きたいものだ。どんな考えかな」
「俺には自信があるからよ。それから俺は人間が嫌いだ」
「人間が嫌い? これは面白い。ではサッサと死ぬがよかろう」
すると陶器師は笑いもせず、
「そうだ、俺は人間が嫌いだ。だから俺は養生して、うんと長生きをするつもりだ」
薪兵衛には意味が解らなかった。黙って竈の火を見詰めた。
と、陶器師は何気なく云った。
「ひどく斬りよいな、お前の首は」
薪兵衛は思わず身顫いした。
「何を云うのだ。気味の悪い奴だ」……あわてて首を引っ込ませた。
「死その物は恐ろしくない」自分で自分へ云うように、穏かな口調で陶器師は云った。