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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
皮肉の嘲笑が浮かんでいた。
と、月子の声がした。
「おおおおようやくあなたのお顔へ、悲しみの色が浮かびました。さてそれではまず仮面を……」
何か物でも取り上げたらしい。軟い石膏でも練るような、箆の音が聞こえて来た。
と、月子の声がした。
「さあ出来ました。生身の仮面」
後はしばらく寂然となった。
とまた月子の声がした。「よいお髪でございますこと。これから変えなければなりますまい。悲哀の人の頭髪は、このように黒く、このように長く、このように沢山ありましては、不自然と云わなければなりません。一朝の悲哀に頭髪は、白くなるものでございます」
また何かを取り上げたらしい。金属製の器物が、棚にあたるような音がした。
と、月子の声がした。
「甘扁桃油、苦扁桃油、接骨木花水、沈降硫黄、そうして闇夜に絞り取った、売春婦の肝臓の血、それを合わせた冷罨剤、これを塗ることに致しましょう。……おうおう白くなりました。卯の花のように真っ白に」
頭髪を梳ずる音がした。シュツシュツという幽かな音! が、それもすぐ止んだ。
とまた月子の声がした。
「可愛らしい額でございますこと。秀でた天停、調った生え際、これも変えなければいけますまい。