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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
が、牛の背のように起伏している。
四方山々に囲まれた盆地、これぞすなわち諏訪の平、その中央にたたえられているのが、鵞湖――諏訪の湖で、廻れば周囲四里はあり、その岸に春陽に甍を光らせ、諏訪困幡守様の高島城が、浮かぶがように立っている。石垣には波が寄せていた。
蜆っ貝を目っけながら、二人の不良は城下外れの、盛り場までやって来た。
遊廓というのも気恥ずかしいような、そんな遊廓を中心にして、煮売り屋、小茶屋がゴチャゴチャあり、江戸両国の盛り場を真似た、掛け小屋なども出来ており、手品、軽口、不具の見世物、そんなものをやっていた。
江戸の淫靡廃頽の気分が、剛健質実の地方へも伝わり、いやらしい化粧の女などが、ピラリシャラリと出入りしている。
「蜆っ貝の本場へ来たぞ」
「さあ掘れ掘れ、掘り出そうぜ」
とたんに二つの蜆っ貝が、二人の腕へ食いついた。
「寄って行かっせに、放さねえだアー」
「ワーッ、新助、助け船だアーッ」
「いけねえこっちも難船だアー、……櫂が、じゃアねえ腕がもげらアー」
「美い娘がいるだアー、寄って行かっせえ ※(歌記号、1-3-28)こぼれ松葉を手で掻き集め、コラコラ、主さ来るかと焚えて待つーウ……歌もうたうだア寄って行かっせえ」