Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens

Aozora Bunko

「これ、待て待て、その駕籠待て」

声は濁りなくさえていて、そうして不断に部下に対して、命令することに慣れている人の、鷹揚さと威厳とを持っていた。

駕籠の一団は足を止めた。

「これ、その駕籠を置いて行け」

「黙れ!」

と駕籠脇の武士が怒鳴った。

「身知らずの痴者! 尋常の駕籠と思いおるか! ……邪魔立ていたすと切り捨てるぞ!」

鮮かに狼狽はしていながら、相手はたった一人であり、それに自分の位置や身分、そうして駕籠の行く先に、何か自信でもあるとみえ、恐れ気もなく叱咤するようにいった。

「よいよい」

と黒頭巾の武士がいった。

「存じておる、存じておる、存じておるからいったのじゃ、その駕籠を置いて立ち去るがよい」

「黙れ!」

と例の駕籠脇の武士は、相手の武士の何んともいわれない品位、それにだんだん圧せられながら、隙を見せまいと威猛高に怒鳴った。

「何を存じて、汝無礼! この駕籠は、そも、この駕籠は……」

「老中田沼主殿頭の、小梅の寮へやる駕籠であろう、贈り主は松本伊豆守のはずじゃ」

「…………」

駕籠脇の武士は黙ってしまった。

が突然、「やれ!」と叫んだ。

白刃!

抜かれた!