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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
と、貝十郎はまた叫んだ。
「冬次郎様は名門の出、右近将監様御曹司、お怪我あっては申し訳なし、五人の輩下の人々ともども、領地外まで鄭重に、方々お送りなさるがよかろう」
身は一介の与力ではあったが、自ずと備わる将帥の器、貝十郎の命のままに、城方の武士ども唯々として従い、粛々として動き出した。
さてこの日の夜となった。
小諸の牧野遠江守の、天守の窓によりながら、田沼意次は城下を見ていた。
遠江守と貝十郎とが、その左右に付き添っていた。
城下は提灯や松明や、篝火でさながら昼のようであった。
昼間城方の武士によって、飛び道具を持って襲われたことが、一揆衆の心を激発し、やぶれかぶれ死に物狂い、一気に城をもみつぶせと、万にもあまる大衆が、城下へなだれ込んで来たのであった。
城は群衆に埋もれていた。
大手の門も搦め手の門も、一揆衆によって封鎖された。
あがる喊声! 火に輝く武器!
間もなく城門は破られるであろう。
「貝十郎」と意次はいった。「そち塩尻の主計方で、わしにこのようなこと申したのう『それ百姓というもの、元来性頑なにして凄じきものなり、集まる時はよく城を守り、散ずる時はよく廓を破る、党を結ぶにおよんでは、金銀珠玉を顧ずして身命を省ず』