Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens

Aozora Bunko

一軒の家から河東節の、水調子の音が洩れて来た。

※(歌記号、1-3-28)なくより外の琴の音も、二十五絃の暁に、砕けて消ゆる玉菊の……

享保十一年三月に死んだ、新吉原中万字屋の名妓玉菊、その三回忌の追善供養に、竹婦人の作った水調子で、揚屋町なる三味線弾き、河栄というものの宅において、十寸見蘭洲が語って以来、有名になった曲である。

女の声で仇めいていた。

ここは下谷の裏町で、二日前の夜乱闘のあった、あの場所から相当離れている、そうしてひっそりと落着いている、そうして格子作りの家などが、生垣などで隣家と境いし、並んでいるというような――ざっと中流以下の人が、隠し女を囲って置くのに、うってつけとでもいいたげの、そういう場所の一軒から、「玉菊」は聞こえて来るのであった。

階下が三間に二階が二間――そのくらい間数はあるらしく、裏に小広い庭があって、茶の木と八ツ手などがあしらってあり、それを囲繞いて一間の竹垣――などがあろうと思われそうな家で、白っぽい午後の陽が表の格子戸に斜めに明るく射していた。

「お吉っつぁんがまた弾き出したよ。玉菊ばっかり弾くじゃアないか」