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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
橋の上手、この時候には滅多に見掛けない屋根船のもやっているのを、遠くの方から二三度窺った平次は、最早躊躇はしませんでした。
見ると目ざす屋根船は碇を上げて、上げ潮に揺るぎ出しそうな有様。
「待て待て、その船に不審がある」
宵闇の中から声を掛けた平次、軽舸をピタリと付けさせると、舷から舷へ、サッと飛び移りました。
「何だ、いきなり人の船に入って来やがって」
水棹を取り上げて、ガバと打ってかかるのを、身を開いて、ツ、ツ、ツ、懐へ入ると見るや当身一本、船頭は苦もなく水垢の中に仰け反ります。
中へ飛込もうとすると、
「誰だ、騒々しい」
胴の間から飛出したのは、一人、二人、三人、いずれも荒くれた大男、そのうちの一人は二本差のようです。
「御用だぞ、神妙にしろ」
「何をッ」
「七人の花嫁を誘拐したのは、その方だろう」
「何を、それッ、相手は一人だ、斬ってしまえッ」
三人の男は、切っ先を揃えて、平次を三方から取り囲みました。平次の武器というのは十手が一挺。
真っ先に飛込んで来た脇差を引っ外して、十手を左に持換えると、右が懐に入って、取出した青銭。
「エッ」
真っ先の一人は、左の眼を打たれて引退きました。