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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
しかし相手はまだ二人、舳先の方からはもう二三人船頭が助太刀に飛んで来る様子です。
平次は十手と青銭と交る交る飛ばして、わずかに身を防ぎましたが、相手の武家は思いの外の使い手で、平次も次第に圧迫されるばかりです。
大川の上から下へ、軽舸を漕がせていた利助とガラッ八は、この時漸く平次の危難を見付けました。
「それッ」
と屋形船へ舳先を叩き付けると、利助、ガラッ八を始め、二人の子分、
「銭形の兄哥、もう大丈夫だ、利助が来たぞッ」
「親分、八五郎が参りました」
「御用ッ」
「御用ッ」
船の上には、一としきり乱闘が続きましたが、平次と利助の捕物上手な駆引と、一つは多勢の力で、大した過ちもなく、間もなく一味五人を、雁字がらめにしてしまいました。
中仕切を開けて入ると、胴の間には、縛られた七人の花嫁、踏み砕かれた花束のように一と塊になって顫えております。
「あッ、親分」
その中でも一番美しくて、一番気の確かなお静は、平次の姿を見ると、悪夢から覚めたように飛起きて、駆寄りました。
*
七人の花嫁を誘拐した髪結のお鶴は、丹頂のお鶴という有名な女賊で、額から眼へかけての赤痣は、人目を忍ぶために絵の具で描かせたものでした。