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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

「よしよしそれだけ聴けばたくさんだ。茶漬でも一杯掻込んで、一緒に来ないか」

平次はもう外出の仕度をしておりました。

「どこまでも行きますよ。一日や半日食わなくたって、なア――ニ」

お勝手へ飛込むと、手桶からいきなり柄杓で水を一杯――

「あれ、八五郎さん、御飯の仕度をしていますよ」

お静は驚いて、その鯨飲振りを眺めました。

二人が小日向へ駆け付けたのは、その日が暮れかけた頃。

「あの娘に逢わせて下さい」

右内の案内も待たず、平次はお関の浜路の部屋に飛込みました。

「ま、銭形の親分」

「親分じゃねエ、太え阿魔だ」

平次は日頃にない乱暴な口をきいて、お関の前へヌッと立ちました。

「あ――れエ」

「お姫様らしい声を出したって、驚くものか。なア、お関」

「…………」

「お前の父親が、殺されたんだぞ」

「えッ」

「十九年間の育ての親だ。お前の生みの親でなくたって、仇くらいは討つ気になってもよかろう」

「本当ですか、親分、それは」

お関の表情も、さすがに強張って行きます。

「どこから入ったか、十五六両の金を持って賭場を泳いでいるうち昨夜、三尺で首を絞められて、大川へ投り込まれたんだ。死骸の上がったのは今日、八五郎が見て来たんだから、嘘じゃねエ」