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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
「なるほど、話は面白そうだな。もう少し筋を通してみな」
平次もかなり好奇心を動かした様子です。
「鉄心道人のことは、親分も聴いているでしょう」
「大層あらたかな道者だって言うじゃないか。やっぱり法螺の貝を吹いたり、護摩を焚いたりするのかい」
「そんな事はしねえが、説教はする。八宗兼学の大した修業者だが、この世の欲を絶って、小さい庵室に籠り、若い弟子の鉄童と一緒に、朝夕お経ばかり読んでいる」
「で?」
「それで暮しになるから不思議じゃありませんか。ね、親分」
「…………」
平次は黙ってその先を促しました。合槌を打つとどこまで脱線するかわかりません。
「もっとも信心の衆は、加持祈祷をして貰ったと言っちゃ金を持って行く。が、鉄心道人はどうしても受取らねえ。罰の当った話で」
「そう言う手前の方がよっぽど罰当りだ」
「米や味噌や、季節の青物は取るそうだからまず命には別条ない――」
「それからどうした」
八五郎の話のテンポの遅さにじれて、平次はやけに吐月峰を叩きました。
「だから、音羽から雑司ヶ谷目白へかけての信心は大変なものですよ。あの辺へ行ってうっかり鉄心道人の悪口でも言おうものなら、請合い袋叩きにされる」