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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
驚いたの驚かねえの」
ガラッ八の仕方噺を、平次は黙って聴いておりましたが、
「素人衆みたいに驚いてばかりいても仕様があるめえ。十手捕縄の手前、お前はどんな事をしたんだ」
キナ臭いのを一本、お面ときめ付けたものです。
「主人の万兵衛は酒道楽で、灘の生一本を取寄せて、自分だけの飲料にしていますよ。ゆうべも別の樽で一升持って行って、観世縒で首を結えた徳利で、別に燗をさせて飲んでいたが、その徳利を摺り替えて、石見銀山の入ったのを呑ませた奴があるんです」
「どうして摺り替えたと判った」
「二本残った徳利を見ると、観世縒で縛ってあるが、一本はその縒がひどく無器用だ。主人の万兵衛が自分で縒ったのは、見事な観世縒でしたよ」
「すると」
「毒酒を入れた徳利はその拙い観世縒で縛ってあったんです。それと入れ替えた本物の徳利は河へ捨てたんでしょう」
「死際にお島を呼んだのはどういうわけだ」
と平次。
「お島はお燗番をしていたんです。酒に毒が入っていると、お島が疑われるのも無理はありません」
「それはどうした」
「養子の金次郎とお島を、ともかく縛りましたよ。そうでもしなきゃ恰好が付きません」