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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
すべた奴、親分の智恵がどんなに働くか、今にみろ――といった恰好です。
「八、物置へ行ってみてくれ」
「ヘエ――」
八五郎が物置の方へ歩き出すのを、
「錠がおりてますよ」
お留は大きな鍵をお勝手の柱から外して追っかけます。
「ないぜ、鍬も鋤も」
ガラッ八は張り上げました。
「盗られたんじゃあるまいな」
と平次。
「そんなはずはありません。錠がおりてるんですから――」
お留は頑固らしく首を振りました。
「鍵をかけるのを忘れたことはないだろうな」
「一度だけありますよ、――旦那が行方知れずになった晩、――それも確かに鍵をかけたつもりでしたが、翌る朝見ると開いていたんです。それから後で三輪の親分が幾度もその物置を覗きましたよ」
「鍬はこの一と月の間たしかに物置にあったんだな」
「さア――」
お留の記憶は次第に怪しくなります。
「あるつもりでも、使う時でないと、うっかりなくなったのに気がつかずにいるものだが――」
平次も物置を覗きました。かなり夥しいガラクタで、鍬の一梃ぐらいはなくなっても、ちょっと気がつきそうもありません。
「じゃやっぱりなかったのかしら」
とお留。
「旦那がいなくなった朝は、確かにこの錠がおりていなかったんだね」