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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

「利八にその話をしたかい」

「え、翌る日またうるさいことを言って来たから、お小遣が欲しかったら、明日にもどうかしてやる。もう私に絡みついておくれでないって言ってやりました」

「利八は金がどこから入るとでも訊いたろう」

「え、――だから私は、痩せても枯れても菱屋の娘だもの、屋敷跡の石っころを起して持って来ても、五十両や三十両にはなるよって言ってやったんです」

「よしよし、だんだん目鼻がつくようだ。ところで、この字は誰の筆蹟だえ」

平次は土の中から出た大福帳の端っこを見せました。

「私の父さんの筆蹟によく似てるけれど――」

お茂はすっかり面喰らっております。

「お前の父親の筆蹟をよく真似た人間があったはずだ。知ってるかい」

平次の問いはひどく突っ込んだものです。

「金蔵どんも、清次郎どんも、上手に真似ましたよ」

「有難う。それでいい」

平次は紙片を丁寧に畳んで紙入の中に納めました。

お茂の宿を出て今戸の清次郎の家まで行く途中で、ガラッ八が顎を先に出して向うから来るのに逢いました。

「親分」

「変ったことがあったのかえ、八」

「何にもありませんよ、――妹を熊谷の親類へやった外には」