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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
ちょうどその時三人の下っ引は、砧右之助をつれて来たのでした。
「拙者をどうしようというのだ。無礼な事をすると許さんぞ」
昨日の町人とも武家ともつかぬ身扮と違って、今日は堅鬢付でカンカンに結った髷も、衣服、大小のつくりも、押しも押されもせぬ武家姿です。
「砧様、お手間は取らせません。昨夜、ここで起ったことを、みんなおっしゃって下さいまし」
平次はぐっと下手に出ました。
「お前はなんだ」
「神田の平次でございます。十二年前の芸州に起った事、鳴川留之丞の悪事、何もかも存じております」
「…………」
「それから、ゆうべ、貴方様が、ここへお出でになったことも」
「何?」
「懐の人相書を落していらっしゃいましたね、――これ、この通り」
平次は土竈から出た人相書を、砧右之助に渡してやるのでした。
「なるほどそれほどまで判っているなら、みんな言っても差支えあるまい。――昨日この店先で、その方が土竈に何か隠してあると言った言葉、あれを聞くと、いよいよ絵図面が手に入ると思い込み、昨夜子刻(十二時)少し過ぎ、いかにもここへ乗込んで来たに相違はない――が、その時はもう万事終っていた。今ここで見る通り、鳴川留之丞も、鞍掛宇八郎もこと切れていたのだ。