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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
娘の死骸は、検屍が済んで、棺の中に納めてありますが、一度のぞいて、平次もゾッと身体を顫わせました。鈍器で頭を打ち割られた美女の死体は、この上もなく、平次の感じ易い心持を暗くしたのです。
「女や子供じゃあるまいな、八」
「達者で横着で、腹の底からねじ曲った野郎の仕業ですよ」
八五郎と平次は顔を見合せました。
兇器の鉈は重三の子分が保管してありましたが、物置から持出したという以外にはなんの特徴もありません。少し新しい刃こぼれのあるのも凄まじく、柄にひどく血の付いているところを見ると、下手人はさぞ猛烈な返り血を浴びたろうと思うだけのことです。
畳の上に泥のあったのや、雨戸を一枚外してあったのは、外から曲者が入った証拠のようでもあり、内に曲者がいて、わざとそんな細工をしたようでもあります。
「下手人はやはり外から入ったのでしょうか」
その辺の微妙な関係は、八五郎には解りそうもありません。
「外から入った者なら、こんな乾いた庭を歩いて来るんだもの、わざわざ泥なんか畳に塗るにも及ぶまいよ」
「ヘエ――」
「それに、他の家の物置から鉈を捜し出すなんてことは、真っ暗な中じゃ容易に出来ることじゃないよ。