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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
重三はキリキリと縄を絞って、お照の襟髪を取ります。
お照は何にも言いませんが、美しい顔は蒼くなって、キッと結んだ唇は、金輪際開きそうもありません。
「重三親分、――その女は、お狩場の四郎の娘に違えねえが、藁のうちから房州で育って、親の罪を少しも知らなかったんだ。その上、桜屋を怨んで入り込んだのは本当だが、お美代を殺したのはその女じゃねえ」
平次の言葉は予想外でした。
「なんだと、銭形の」
「まア、落着いて聴いてくれ。――こう言ったところで、十三丁目の親分の手柄にケチをつけるわけじゃねえ。下手人は今、ここで、親分に縛らせてやる」
「…………」
平次の穏やかな調子になだめられて、重三もしばらく手を緩めました。
「聴いてくれ、重三親分。そのお照という娘は、桜屋に怨みを言うつもりで入り込んだかも知れないが、一人娘のお美代を殺すような非道なことをする人間じゃねえ。この間もここへ来てみると、痛々しく取逆上せた主人の六兵衛を、蔭になり日向になり、慰めたり、いたわったりしていたのはその娘だ。その娘の眼には、なんの罪も穢れもなかった」
「…………」
「そればかりじゃねえ。あの鉈をふり廻してあれだけの虐たらしい殺しようをするのは、誰がなんと言っても男の力だ。