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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

「外には?」

「岸松太郎と大原幸内は宵のうちに帰って、家から一と足も出ません。五助や柾次は飲み足りなくて神楽坂で一杯やっていたそうだし、困ったことに、川波勝弥を殺しそうなのは一人もありませんよ」

「死骸の側に懐ろ鏡があったというじゃないか」

「ギヤマンの懐ろ鏡で、こいつは二朱や一分で買える代物じゃありません。赤い羅紗の鏡入に挟んだまま、死骸の側に落ちて割れていたんですぜ、親分」

「変な声を出すなよ、虫が起るじゃないか」

「捨てられて死んだ師匠の娘、お類の業とでも思わなきゃこいつは見当もつきませんよ」

「幽霊が脇差を持って歩いて、人間を芋刺しにするのかい」

「悪い流行物だ。行ってみて下さいよ、親分」

「師匠の柴田弾右衛門という人は?」

「気の毒なことに、昨日まで床の上に起上がっていたが、今朝の騒ぎでとりのぼせたものか、まるっきり正体もありません。大鼾をかいて寝ている側で二番目娘のお半さんが介抱だ」

「大鼾? そいつはいけない。気の毒だが当り返したんだ」

「可哀想なのはお半さんだ。良い娘ですよ、親分」

「そんなものがいるから、八五郎がいきり立ったんだろう」

平次はニヤニヤ笑いながら、それでも外出の仕度に取りかかりました。