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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
十手捕縄を預かって、銭形のとか何とか謳われる平次には、相手の腕っ節を恐れないだけの自尊心はあったのです。
「相済みません」
「林彦三郎を縛るには、縛るだけの手順が入用だ。俺はあの男の腕っ節が怖いんじゃない、――死骸の側に落ちていたギヤマンの懐ろ鏡が怖いんだ」
「するとやっぱり幽霊?」
「仏壇の中にある、懐ろ鏡を、林彦三郎が持って行くはずはない」
「なるほど」
平次が深々と腕を拱くと、それを真似たように、八五郎ももっともらしく腕を組むのでした。
「もういちど引返して、熊吉の身許と、奉公人たちの様子、林彦三郎とお半の仲を訊いて来てくれ。熊吉が給金を溜めているかどうか、主人父娘に受けが良いか悪いか。それから林彦三郎とお半がどんな心持でいるか。お半は弁天様のように美しいが、彦三郎はあまり美い男じゃない。が、人間は悪くないな」
平次の独り言を背に聴いて、ガラッ八は引返しました。叱られた腹癒せに、素晴らしいネタを挙げて来ようというのでしょう。
その晩、
「親分、骨を折らせたぜ」
ガラッ八がヘトヘトになって帰ったのは戌刻(八時)過ぎでした。
「どうだ解ったか」
深い思案から呼び覚されたような平次。