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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

と、こう言うんだ。奥まで通るように、なるべく大きな声を出すんだよ、いいか」

「ヘエ――」

八五郎は飛んで行きました。さぞ、肴町中に響き渡るように張り上げたことでしょう。

それから一刻(二時間)ばかり、掛り与力、笹野新三郎出役、賀田杢左衛門や、藤八、平次などの報告を聴いて、

「それで相解った。自首して出た林彦三郎は、一応宿元へ引取らせ、家主に預けおくがよかろう」

笹野新三郎も、平次と同じように、林彦三郎を疑う心持はなかったのです。

「恐れ入りますが、旦那」

「なんだ平次」

「林彦三郎はやっぱり、下手人としてお引立てになった方がよろしゅうございます」

「そうかな」

「あの通り八五郎がぼんやり戻って参りました。道場へ知らせてやっても、誰も何とも言わないようじゃ、他に下手人があるわけはありません」

笹野新三郎は黙って顔を挙げました。その旨を承けて、下っ引が二三人。

「立てッ」

林彦三郎の三方からバラバラと取巻きます。

「どうだ八、――存分に張り上げてみたか」

平次はガラッ八を迎えてこう訊きました。

「節分の豆撒きほどに張り上げましたよ。岸松太郎も、大原幸内も、黙って顔を反けたっきりさ。