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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
島吉は半日の探索で調べ上げたことを話しました。
「刃物は?」
「脇差だろうと思うけれど、曲者が持って帰ったと見えてここにはない」
「紛失物は一つもなかったんだね」
と平次。
「何にもなくなったものはございませんよ」
番頭の市助が引取りました。五十前後の乾物のような中老人で、算盤には明るそうですが、主人を殺すような人間とは見えません。
「主人を怨んでる者は?」
平次は至って常識的なことから踏出しました。
「結構な御主人で、人様から怨まれるような筋はございません」
「町内の岩田屋の福次が、地境のことで三文字屋を怨んでいたそうだ」
島吉は但し書を入れました。
「主人が死んでトクになる人は?」
「…………」
番頭は口を緘んでモグモグさせます。
「養子の小三郎だろう。近ごろ大旦那と折合がよくなかったそうだから」
これも島吉が引取りました。
「呼んで貰おうか番頭さん、ここで話を聴きたいが――」
殺された久兵衛の前で、養子の小三郎はどんなことを言うか平次は試したかったのです。
「私が小三郎ですが、親分さん」
唐紙の蔭から、そっと顔を出したのは、幾松と同年輩か、どうかしたら一つ二つ若かろうと思う男でした。