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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
「馬鹿野郎」
ガラッ八の話のテンポの遅さ。これが親分を焦らして、自分から乗出させる魂胆と知りながらも、平次はツイこう威勢の良い「馬鹿野郎」を飛ばしてしまいました。
「まず騙されたと思って、逢ってみて下さいよ。相手は武家屋敷だが、これが表沙汰になると、大坪家の家名に拘わるから、用人の小峰右内という人が、持て余してそっと、あっしに頼みに来たくらいだ。旗本の大身に御機嫌を取らせるのも、満更悪い心持じゃありませんよ」
「呆れた野郎だ」
「大事の大事の一人娘が行方知れずになったが、その代りのニセ首を、成敗することも突き出すこともならねエ」
「フーム」
「娘はどこへ行った。お嬢様をどこへ隠した――とヤワヤワと訊くと、『私が浜路でございます』と、ニコニコしているんだから手の付けようはねえ。あんな時は、親分の前だが、綺麗な娘はトクだね。同じニセ首でも、こちとらのようなのだと、いきなり縛り上げて拷問にかけられる」
ガラッ八の話は遊び沢山で、要領から遠くなるばかりですが、とにかく、千五百石取の大身の一人娘が、祝言の前の晩、一夜のうちに摺り替えられていたことだけは間違いありません。