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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
裏口が静かに開いて、真っ黒なものが、そろりと外へ出たのです。
「…………」
二人は呼吸を殺して見詰めました。
真っ黒な人間は、しばらく外の様子を見ている様子でしたが、誰も見とがめる者がないと判ると、引っ返して家の中から手燭を持って来ました。
磯屋の主人、伽羅大臣貫兵衛です。
貫兵衛は平次と八五郎には気が付かなかったものか、その前を通り抜けて、物置の方へ足音を忍ばせます。
「来い」
平次は八五郎を小手招ぎながら、静かにその後をつけました。
やがて物置から、プーンとキナ臭い匂い、パチパチと物のはぜる音。
「八、大変だ。あの火を消せ」
「おうッ」
二人が一団になって飛込むと、磯屋貫兵衛は、手燭の火を、物置の中のガラクタに移している最中だったのです。
「野郎ッ」
遮二無二飛込むガラッ八。
「あッ」
燃え草の火の中に、貫兵衛と組んだまま転がり込みました。咄嗟の間に平次は、物置の側にある井戸に飛付くと、幸いそこにあった用心水を一杯、燃え上がったばかりの焔の上へ遠慮会釈もなく、ドッと浴びせたのです。
「わッ、ブルブル」
火は消えました。が、ガラッ八と貫兵衛は、取っ組んだままズブ濡れになって、物置の口へ転がり出ます。