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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
Read 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) by 三上 於菟吉 (みかみおときち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 344,083 characters · 673 screens
たら、ちょいと面白いお芝居になるかも知れない。なにも、敵討ちの邪魔をしたいばかりが、おいらの望みでもない――あの美い男の雪さんと、この角張った剣術使いを血みどろに戦わせて、高見の見物は、ちっと、胸のすくことかも知れないよ。
お初の慾望は、平馬の、淫れ心に充ちた目つきに唆られたように、浅間しい、歪み、穢されたものになって来た。
――どうせ、雪さんに意趣がえしをするなら、おいらの目の前で、一寸だめし、五分だめしに逢って、のた打ちまわるところを、この目で見てやりたい――一件を三斎隠居に訴えるようなことをしたら、あの人は、おいらの知らない間に、引っくくられて、誰も知らない場所で、始末をつけられてしまうだろう。それじゃあ、おいらには、面白くもうれしくもありはしない。
お初は、気が、がらりと変ってしまった。彼女の瞳は、新たに胸に萌した、異常な願望に、度強くギラギラと輝き出した。
猫撫でごえで、
「お杯をさし上げて、失礼でござんせんければ――」
「失礼も何もあるものか――いや美婦の紅唇にふれた猪口のふち――これにまさるうれしいものはござるまいて――」
勤番ざむらいの、お世辞のような、気障けたっぷりのことを云って、杯をうける平馬は、お初のけものじみた慾念に燃える瞳に刺戟されて、顔中の筋肉を、妙に硬ばらせた。