Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
Read 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) by 三上 於菟吉 (みかみおときち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 344,083 characters · 673 screens
その中には、いつぞや、山ノ宿の出逢いで、呆気なく、当て仆された、あの浅草の武術家もいるに相違なかった。
「雪、びっくりいたしたか?」
平馬は、皺枯れた、毒々しい調子を浴びせて来た。
雪之丞は、相変らず、焦立ちも見せず、含笑って、
「最初は、ちょいとばかり、気に病みましたが、どうせ、気がつかずにはいませなんだ――矢を射かけられれば、射手の在りかはわかりますからねえ」
むしろ、旧友に、なんの害意も持ち合わせず、めぐり合ったときででもあるような、しずかな答。
その語調に、はじめて、この不思議な存在を認識したであろう武術者たちの目がおに、ありありと、驚異のいろがうかぶ。
彼等は、平馬から、雪之丞の本質について、聴かされてはいても、その美しさ、その妖しさ、その悠揚さ、その鋭尖さを、目に見、耳に知り、五体に感知するのは今が最初で、しかも、相当の修業者であるとすれば、相手の一身に、みじん、隙も退け目もないのは、一瞥で判ったであろう。
驚異ばかりか、恐怖さえ、漂うように見えた。
平馬は、のしかかるように、
「今宵こそ、雪、生きて、この場を、立ち去れると思うと違うぞ」