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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

Read 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) by 三上 於菟吉 (みかみおときち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 344,083 characters · 673 screens

Aozora Bunko

たとえ、おまはんが、天狗昇、飛び切りの術を心得ていたって、ここからそこまでは五間もある。飛びついて来る途中で、一度当ったが最後、はがねの板でも抜こうという、鉄砲玉が、おむかえにいくのだからね――雪さん、そんなへッぴり腰をして、鉄扇なんど振りまわすのは、やめたらどうだい? ええ、こう、そんな物は、捨てしまえと、言っているのに!」

紅い唇を、食い反らすようにお初は罵り続けた。

雪之丞は、しかし、別に、恐怖に度を失った容子はない。

彼はしずかに考える。

――なるほど、お初の申すとおりじゃ。こちらから、飛びかかって行ったところで、あの弾丸が迎えに来れば、途中で射ち仆されてしまうにきまっている。闇夜のつぶては避けようがあっても、まともに狙われた鉄砲では、どうしようもない。つねづね師から鉄砲で狙われたら、一がいに敵対しようとせず、策を以て対する外はないとうけたまわっていた――ここのことだ。

雪之丞は、どんなときも失わぬ、心の余裕を保っていた。

――それに、若し、あの女がわしをすぐに射ち殺すつもりなら、四の五の並べず、射ちかけて来るはずだ。それを、あんなにべらべらと、しゃべり立てているところを見ると、今、この場で、殺す気はないのであろう。