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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
Read 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) by 三上 於菟吉 (みかみおときち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 344,083 characters · 673 screens
それとも、さすがは、悪の統領だったお人、わたしに刃向って見ようとするであろうか?
雪之丞は好みの、雪投げの寒牡丹の衣裳に、女よりもなよやかな身をつつんで、つつましく坐ったまま、不敵な微笑を、美しい紅い口元にうかべた。
すると、気配がして、振袖小姓がはいって来て、あるじのために褥なぞととのえた。
かすかなしわぶき。三斎隠居の姿があらわれた。
隠居は、めっきり窶れている。が、彼は、相変らず、不敵なほほえみを絶たなかった。
ひれ伏す雪之丞をながめて、
「ようこそ太夫――初下りの顔見世興行も、首尾よう大入りつづきであったよしで、目出たいな」
それには、雪之丞は、答えなかった。平伏したまま、なかなか面をあげぬ。
「雪之丞、おもてをあげなさい。何も、そううやうやしゅう致すにも及ばぬことじゃ」
雪之丞は、顔をあげたが、その頬が涙にぬれているように見える。
三斎は、その涙を見つけて、
「お、太夫、泣いているな?」
「は、御無礼、おゆるし下さりませ――つい、さまざま、思い出しまして――」
「思い出したとは? 何を?」
「わたくしめが、顔見世狂言にまねかれて御当地にまいり、中村座に出ましたはじめ、御一門さまの御見物をいただき、天にも昇る気がいたしましたが、あのおり、おさじきにお並びなされました方々が、御隠居さまをのぞきまいらせ、ことごとく