Japanische Klassiker mit Furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme
そのそばで私は妻の代わりに幼な子を抱いてあやしながら、しばらく胸の中に温泉のわくような思いにひたっていた。
私の一家の幸福な時間、それは日曜日の朝みんなそろって天主堂へミサ拝聴に参る時であった。私は大きな子の手をひき、妻は小さい子をおんぶして畑道を丘の上の赤い天主堂へゆく。鐘楼から寄せ鐘がやさしく清く鳴り渡る。あの家からもこの家からも晴れ着にかえた人々が明るい顔をして出てきて同じ道に加わる。ステンドグラス越しに射す朝日の色の波の中に座って、私の声も妻の声も、たどたどしい幼な子の声も、隣に座っている老農夫のだみ声も、ひとつの声となって、天にまします我らの父を賛美し奉った。あんな幸福な日はもう私には来ない。
私の交友は少なかった。みんな似たような貧乏な学究たちだった。ある夏の夜だった。私が小庭の石に座って月を浴びていると、解剖学の中村助教授がうちわ片手にふらりと入ってきた。彼は私の前の石に腰をおろすなり、さんしょううおの卵について話し出した。こんなのがいつも私のうちの涼み台の話題であった。彼は処女生殖の実験をしているのだった。前の年に、とのさまがえるの卵では成功していた。