Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
三
「あの男はこちらに大分永いらしいから、きっと何か手がかりを見つけてくれるだろう。案外、いやその人なら知っているというようなことがないでもあるまい。……こんなに人間のうじゃうじゃいるところで、何年も行方不明の男一人見つけようとするのは、何しろ一仕事だ!」
そして、
「早くお前もおやすみ」
彼はいかにも活動の後の睡眠を愉しむ風でさっさと寝台に入った。
三
次の朝、伸子はいつもの通り元気を恢復し、爽やかな気分で目覚めた。寝室のカーテンはまだ閉じたままであった。カーテンの僅な隙間から、一本の震える細い金線のような光線が薄暗い部屋に射しこみ、化粧台の上の白粉壺に、小さい燃える炬火のような閃きをつくっている。
彼女は、静かな気持でかけものをはねのけて起き上った。伸子は、首をのばし、彼方の寝床を眺めた。父は先に起きてしまったと見え、床は空であった。
伸子は、枕許の時計を見た。九時半になっている。彼女は、忽ち昨夜の約束を思い出した。――
彼女は、部屋着を羽織り、窓をあけた。今日もよい天気だ。少し靄っぽい空で、朝日が暖かく十月下旬の街路や建物に輝いている。伸子は、格別急ぎもせず顔を洗い、髪を結い、衣服を更えた。