Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

三

という歌を一首、餞別としてくれたのであった。

「奥様」

女中がそのとき、襖の外から母を呼んだ。

「そろそろ御飯のお支度ができました」

「行こうじゃないか」

「ええ。――でも赤ちゃんを見たいわ、前に」

「ねんねだろうよ」

母は先に立って、廊下を一曲りした座敷の唐紙を開けた。電燈を一隅によせて、薄暗く覆いのしてある下で、看護婦が洗濯物をたたんでいた。小さい枕屏風にかこまれて、針さしのように膨れ上った赤い蒲団がある。伸子は、抜き足をして近より、膝をついて、すやすや睡っている嬰児の顔を見た。小さくて、母似か父似かさえ判らず、妹という感じが適切にしなかった。彼女は、背後からかぶさるように中腰になって覗きこんでいる母に、顔だけ仰向けてささやいた。

「名、何ていうの」

「ゆき子としたのだけれど」

「お乳くさいのね」

皆のいるところに戻ると、父が機嫌よく冗談を云った。

「やっとお出ましだね、大分内証話があったと見えるな」

伸子は次第にくつろぎと楽しさが心や体にしみこむのを感じた。

三

金属の何かを、小さい槌ででも叩いているらしい、澄み渡ったカン、カンカンカンという連続的な音で、だんだん伸子は眼を醒した。