Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
七
七
重いスープ皿を載せた盆を持ち、伸子はそっと唐紙をあけた。
一切炭火が入らないので、室内の空気は清らかで、すがすがしかった。硝子戸越しの麗らかな日光が寝台の金具に燦いていた。
「いい気持ね、ここは。――頭がすーっとするようよ」
返事がない。――伸子はしまったと思って、首をすくめた。佃は眠っていると見える。
伸子は俄に忍足になって、枕許に近よった。音を立てないように傍の小卓に盆を下し、枕の上を覗いた。彼は眠っているのではなかった。仰向いて天井を眺めている。唇を引締め、上瞼を引きつらすような眼つきで、一点を凝視している。何かと思い、伸子は自分も一寸天井を仰ぎ見た。
「どうなすって」
「…………」
「眠っていらしったの?」
佃は、のろのろ眼球を伸子の顔の上に動かし、悲痛なような、訴えるような眼差しで、元気に立っている伸子を眺めた。
「――眠ってなんかいたんじゃありません」
非難を含んだ語勢に、伸子は初めて、佃が、彼女から見えなかった側の手に小型聖書を持っていたのに気づいた。伸子は、それを見ると、説明しがたい不快を感じた。夫が床についてからもう数回彼女はこんな情景を目撃した。