Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

三

一

別のしわがれた声が応えた。

「へえ、……一体どんな奴だい」

「狆くしゃんさ。――佃とか何とか云うアメリカごろとくっついたのさ!」

――伸子は、高く酒を啜る音を聞いた。

三

一

雨夜で、壁に行燈形の電燈のついている玄関は陰気であった。古びた天井が低くかぶさるようで、薄い絹の靴下一重の下に、畳がつめたくかたく触った。どうしたのか誰一人でてこない。屏風箱の置いてある狭い板敷へ来かかると、ひょいと突き当りの曇硝子の戸から、女中の不用意な顔があらわれた。四人、父を先立てて来るのを認めると、びっくりし抜いたようだ。

「まあ!」

挨拶もせず、いきなり奥へ駈けこんだ。さらさらと爪先をするような聴きなれた母の跫音がした。伸子は、母が床についているとばかり思いこんでいたので、その軽い速い熱心な足どりを聞きつけると、自分が帰ったときいて、亢奮のあまり立ってきたのではないかと、ぎょっとした。伸子は、急いで厚い扉を開けようとした。向う側からも急にハンドルをガチャガチャ云わせ、戸が開かれた。女中とかさなり合うようにして、多計代がでてきた。

「まあどうしたえ、伸ちゃん!」

感に迫った顔なので、伸子も言葉がでなくなり、母の手を執った。