Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

八

佃は、井戸の横で、木戸の繕いをしていた。厚く着ぶくれ、スキーにでもかぶるような毛糸帽を耳まで引っかぶった彼の様子は五十ぐらいの年よりに見えた。

「――そんなに力を出していいの? 私が打ちつけて上げましょうか」

「何、大丈夫です、このくらい。――ちょっと針金を持って来て」

伸子は、納戸へ行きかけた。

「ああそれから時計を見て下さい、机の上にある」

伸子は、針金の束と、針金切りの鋏をもって戻った。

「一時十分前よ」

「もう? じゃ支度しなくちゃ」

佃は、いそいで仕事をしまいかけた。

「――どこかへいらっしゃるんだったの?」

「ええ、君も支度して下さい」

「出しぬけね」

伸子は、とよを顧みて笑った。

「そんなら早くおっしゃればそのようにしているのに。おしゃれで二時間もかかったらどうなること?」

伸子が着換えをしている部屋へ、佃も手を洗って来た。

「和服にしよう」

「そうお――和服って、いつものっきゃあなくってよ――一体どこなの、行くところは」

「いいんです、このまま行ったってかまわないところなんだ」

「どこ」

「行けばわかります」

「動坂」

「いいや」

「――知らずに行くのでいいところなの? 面白いところ?」