Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

六

――佃は今日、伸子がいずれにせよ出かけることは承知であった。それだのに、なぜこんなに逃げる者の感情が自分につよいのか。自分に反抗し、努めて苦しいくらいゆっくり小砂利を敷いた道を歩きながら、伸子は、人にも話せない感情だと思い、苦い涙が眼に浮んだ。

六

田舎に着いた日、その地方は五月の嵐っぽい天候であった。俥に乗って市から村へ通じる寂しい一本道にかかると、荒い幅広い風が幾里も先の山脈からその一筋道に吹き下した。幌がドーッと一陣風を孕むと、俥夫は梶棒に体全体の重量をかけ、しがみついて立ちよどむ。そういう瞬間、伸子は夕暮の正面に一本ぼんやり白く横わる道と、黒い嵐雲の捲き立つ空が山際のところでだけ物凄く藍色に光っているのを、まじまじと見た。情熱的な暗い不安な空模様が、彼女の心の状態の反映のようであった。

祖母は、毎日竹藪をこいだり、納屋へ入ったりして働き廻った。そして、いろいろ見えないものを発見し、家じゅうの騒ぎを惹き起した。

「ちょっと畑さ行って与次郎がいたらよんで来てくんろ」

与次郎が縁側に廻ると、祖母は炉ぶちで煙管をはたきながら、

「お前、茶壺しらねえか? 島根にいた頃、出入りの大工で茶人がいて、これへ茶入れとくと湿けることがないと云ってくれたんで、おら大事にしていたに無いごんだ」