Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
四
一
――
より情熱的でない、平和的な佐々は、妻と娘とのこのような心的格闘に、手の下しようがなかった。彼は一方に妻をなだめ慰め、一方伸子に、心から歎息して訴えた。
「いつも家庭のトラブルをひき起すのはお前だよ、なぜもっとテンダア・ハアトになれないかい、愛を受け入れなさい。――平和に暮そう……え? 自分も人も苦しめる主義なんぞ捨てちまえ」
伸子は辛うじて、
「主義なんぞじゃないのよ、父様」
と、云い難い悲しみで答えるだけであった。佐々も、心痛から、単純な事務家らしい怒りかたで、遂には、
「さあ出て行け! お前が親を捨てるなら、俺も子を一人捨てた。さあ、永久に出て行け!」
と叫ぶのであった。
四
一
彼らは引越した。家は、吉祥寺前の医者の煉瓦塀と、葉茶屋の羽目との間の狭い路地の奥にあった。両親の家まで、吉祥寺をぬけると十五分ばかりで行けた。
彼らが移ったのは、八月の暑い盛りであった。伸子は、家さがしに毎日歩きすぎたので、熱を出し、床についていた。引越しの日も、彼女は寝床の上から、庭づたいに俥夫が本箱を運びだすのを眺めた。
それが行ってしまってから、伸子は、床の上に立って、すこしふらつきながら着物をなおした。