Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
二
佃は、そのようなことはちっとも感じないらしかった。前晩寝床の上で背中を丸め「軍は潰走した。我等は勝利を得、敵将五人を捕虜とし云々」と下読みしておいた初等のラテン読本を持って出勤して行く、帰ってくる。遅疑なく明日の朝も出勤するであろう。彼に、伸子は自分の感情を訴えるきっかけを見出せなかった。それに、彼女は、自分達の経てきた感情生活を時々顧みた。互に知り合ってから今日まで、彼らに波瀾がありすぎた。周囲と戦いつつ互の愛を見失うまいとする熱中、彼も守り自分を守る努力、いつもそれらのため、伸子の心は緊張しつづけ、刺戟されつづけであった。それらが無くなったので、自分は張合ぬけがしたのであろうか? 平和に処す法を忘れたアマゾンに、自分はなったのであろうか。伸子は、そのように考える時もある。しかしその考えは、目前にある生活とそぐわない感じを、消す役には立たない……。
伸子は、ウクレリーを袋にしまって立ち上った。
二
伸子は、台所口に錠をかけて外へ出た。表の大通りでは、電車がやかましい軋りを立てて、埃の中を走った。吉祥寺山門前のいしだたみのところでは、三人の少女が唄に合せて毬をついて脚の下を潜らせていた。