Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
伸子は、動坂から帰る途々それらのことを考え、平和にいたる道を見つけたような心持を感じた。母との交渉は、彼女にとって絶えざる重荷であったが、そこに理解を単純にする一見地が出来たようで、伸子は清らかささえ感じたのであった。佃もそう分れば、気の持ち方も違うだろうと、伸子は楽しい期待をもってそれを話し出したのであった。けれども、彼は、無感動の状態から出なかった。彼は、小楊枝を使いつつ、額の上に皺をよせ、斜に伸子を見上げて答えた。
「僕は批評しませんよ」
「批評ではなくよ、見かたよ。どうせ私どもは一生無関係にはなれないんだから、なるたけ賢い理解を持つ方がいいと思うの。お互のために……好意のある、けれども、うわてな心の持ちかたね……」
「――まあ、分る時が来れば分りましょう」
そう云いながら、彼は、顔に一種特別な――あまり高貴でない表情を浮べて、指の節を一本ずつぽきぽき折り鳴らした。伸子は、眼をそらし切ないような顔をした。佃が、一般に、人間的興味のある活々した話題を好まないのが、伸子に不満なのであったが、それにも増し、彼が、気のない、一寸面倒くさい時、ぽきぽき指頭の平たい、無骨な指の節を鳴らすのが、伸子には厭なのであった。