Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

四

「これで結構よ、有難う」

伸子は、写真を、もう一遍見なおしながら、云った。

「よく――はっきり撮れているわ」

四

高台の濃やかな青葉とそれを透す日光の美しい気候が来た。崖ぶちの、彼らの家で、生活は相変らず単調であった。生活は狭く無表情に廻転している。伸子は、不可抗力にその調子に巻きこまれていながら、いつまでも不本意で、抵抗を失えなかった。伸子の気分が平和なのは、二人が別にこれという話もせず、笑いもせず、ぼんやり縁側に腰をかけて、樹でも見ている時であった。丁度、二匹の犬が、日向で前脚をのばし、その上に顎をのせて、うつらうつらしている時のように。けれども、その眠ったような平穏は、いつも永続きしなかった。先ず、伸子が自分達の有様に、云いようない物足りなさを感じ出すのが常であった。これが二年前、あのような熱情で生活し始めた男女の有様であろうか。

よき結婚生活という、あの時分の標題は、もちろん全然無くなりきっていたわけではない。伸子が、自分の感じる不安について彼に話せば、彼はたちどころに、その表題を再びとり出した。それで彼女を安心させようとした。しかし、それとても、近頃は何と疑わしいものになって来ただろう。