Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
そのことで、伸子はヒステリーを起すほど苦しんだ。養子問題はこのうちうやむやに消滅した。当時の混乱した心の苦痛が今甦って来て、伸子は、また同じことが始まったかと恐ろしくなった。彼女は、
「私の幸福って――妙ね、何だか」
と、切なく、皮肉な吐息を洩した。
「そんなこと抜きでも、あたりまえじゃないの――つまり、あなたとして一足飛びのことなすったから、順序を踏みなおすと云うだけじゃあないの」
「…………」
佃は不興げに上を向いたままであった。
「いやならいらっしゃらないだって、もちろん私平気よ」
伸子は熱心に囁いた。
「あやまる必要なんか、決してありゃしなくてよ、あなたに。動坂がそもそも滅茶を云ったんだから。――お父さんにすっかりお話して、行くのなんか、やめましょうよ、じゃあ。ね? 却って立派かもしれない、その方が……」
佃はやはり沈黙して、天井を見ている。
「ね、そっちばかり見ていずにさ……なぜ黙っていらっしゃるのよ」
「だから――君が望むんなら行きます、と云っているでしょう」
「そんなの、いや」
「どうして」
「だって――あなた、あんな風に電話かけたっきりで、すらりと運ぶと思っていらしったの? それで、はいと承知すると、思っていらしった?――正直に云って」