Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
七
そういう男の、哀れな、胸いっぱいの心持、それがこの気持なのだと、伸子は思った。
自分の降りる場所へ来た時、伸子は、ほっとした。歩道へ出ても、なお、心持の揺れがのこっていた。彼女は、自身の驚きを振り返って見るような心持で、停っている電車の窓を見上げた。カーキ色の軍服の背中で、夫人は見えなかった。
「――手紙下さること? 動坂の方へ」
「さあ……そんな暇があるかどうか……私の手紙なんぞつまらないでしょう」
翌々日、佃は旅行に出発した。伸子は動坂へ行った。
七
そんなことを云って立ったが、佃は、時々伸子へ便りをよこした。景色を、自分で写生したハガキが多かった。簡単に、その日の天気のよし悪しなどだけ、書いてある。彼は、自分が旅行している間に伸子の感情が推移することを、期待しているらしかった。実際、伸子も、毎日相剋の状態で佃と狭く暮しているよりは、精神に余裕ができた。動坂の家は、暑中休暇で、がら空きであった。多計代は子供づれて、田舎へ避暑していた。のこっているのは、父と伸子だけであった。それも伸子に休安を与えた。
ある朝、風通りよい畳廊下のところで、伸子は、浴衣地や海苔の罐などを、大きなバスケットにつめていた。