Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
昼頃の汽車で書生が田舎へ行く。それに持たせてやる品々であった。佃のところから来たハガキが、そばに散っていた。今朝のは、奈良からであった。眼ばかり大きい大きい鹿と、鳥居が描いてあった。
「昨日寸暇を利用して、奈良を俥で一巡しました。春日神社の森の中は、別天地のように涼しかった。鹿がやさしい顔で幾匹もよって来ました。こんな優しい動物なら足の痛くなるようなこともあるまい」
伸子はその文句を読んで、苦笑した。
保と三越へ行った日、帰って見ると左足に鼻緒ずれができていた。素人療治をしているうちにこじれて、伸子は、この頃毎日病院へ通っているのであった。鹿が繊い脚の先を自分のように繃帯され、のたりのたり歩く恰好を空想すると、一寸滑稽であった。が、荷作りの合間にもう一度読みなおすと、伸子は何だか、単純におかしがれなかった。こんな優しい動物なら云々。伸子が優しくないという心があるのであろう。彼らしい感じかただ、と、伸子は思った。優しさなどというものも、彼にすれば、愛と同じに消耗しない固形物のような存在に思われるのであろうか。
伸子は着物を着換え、病院へゆく支度をした。