Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
朝、ホテルの窓から向いの屋根を眺めると、とけた霜から湯気ののぼるのが見えた。勤め人や労働者などは、みな同じ鋪道でもきららかに日の照る側ばかりを選んで往来している。午後が短く、夕暮が灰色に侘しくなって来た。夜更けの芝居帰りなど、思わず外套の襟を立てて肩をすくめるような気難かしい風が荒々しく市街を吹きまくった。夏以降、一九一四年からの欧州戦争の終結が目に見えて迫ってきていた。
十一月七日の午後、伸子は珍しく朝からホテルに引籠っていた。
彼女は、晴れやかな昼間の光線に喜び戯れながら風呂に入った。それからこまごま母へ長い手紙を書いた。昼食をすまして再び部屋に戻ると、彼女は切手を貼るばかりの厚い封書の置いてあるテーブルを廻って、ぶらぶらその辺を歩き出した。まだ二時前であった。食堂のかえり、彼女は切手を買ってくるのを忘れた。どうせ階下までまた行くくらいなら、今朝から一遍も外出しない、少し歩いて来ようか。けれども――何処へ?
伸子は、何かきっかけでもさがすように、窓をあけて往来をみおろした。午後の日光が窓々の閉った建物の真正面を照し、軒蛇腹のところの厚い金商牌を埃っぽく輝かせている。