Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
佃ではなかった。――
改札口まで、今度はゆっくりコンクリートの上を歩きながら、伸子は、あんなに迎えられて帰る人は、何という幸福だろうとしみじみ思った。考えてみれば、夫が迎えに出ていてくれようなどと空想したのが、そもそも間違いであった。彼は、伸子が東京からどこへか行ったり帰ったりする時、決してステイションまででも、来たことはない人であった。その上、歓んで迎えてくれと要求もされない心持であった。去年の初夏、同じ田舎から、同じようにして帰って来た。その時と感情は全然違っていた。それは、伸子によくわかっていた。今度、伸子が帰って来たのは、どうして夫婦の関係を立てなおそうかと思うより、その関係を、最も合理的にかえるには、どうしたらよかろうという考えに押されてであった。互の運命に対する恐れも深くあった。特に佃の側に対して。どんなに救いがたいものとなってはいても、伸子は、夫との絆にまだ愛があった。他人にその始末をつけてもらおうとは、絶対に思えなかった。せめて自分達の意志と、後に悔ない必然とで、破れるものなら破りたい。そういう心持なのであった。そんなはずはないと心得ていながら、俥の梶棒があがる時、伸子はもう一遍、水のまかれた日光のささない三和土の上で、小荷物運搬の手押車をよけよけかたまっている疎な群集の中を物色した。