Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
ガランとしたそれらの窓々から五色の紙テイプが吐き出され縺れ垂れ下っている。速記に使う黄色い紙、千切れた紐のような相場通信紙、一分まえまで、なんらかの関係で金を意味したそれらの紙屑を踏みつけ、歌う、笑う、旗を振る男女の群集がゆるゆる練っている。事務所の内に人影の見える窓はなかった。
ある角で、車道の真中に一台電車が乗りすてられたままになっていた。運転手さえ姿を見せなかった。奇妙に無力なものに見えるその黄色い屋根の上で、二人の浮浪児が口笛に合せて踊った。狩り集めの急造楽隊が国歌を吹奏しながらやって来た。人波の間で、
「さあお祝のしるしに一本! 一本いかがです。五仙! 五仙! さあ記念に一本!」
両手に各国の小旗を振りかざし抜目ない商売をやっている男がある。
――自分だけ一足先に抜けたり、街路を突っ切るなどということはとても不可能なことであった。片手に小旗を高くささげ、片方ではしっかり平野につかまり、体の小さい伸子は前の人間の外套の背中に鼻を擦りつけそうにしながら押されて行った。
彼らはひとりでにウォール・ストリートとブロウドウエイとの辻に出た。三方から潮のように寄せて来た大群集は、塵埃にまみれたウォシントン銅像の立っている広場を中心として、どっちにも動かれず、渦巻いた。