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Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

九

彼女の感情が動いた。好意は嬉しかったが、阪部にいい気持そうにそんなことを云われているのが苦痛になった。

「いいことよ。議論で決定することではないのよ。とんだ巻き添えにお会わせしちゃったこと」

彼らは五時まで話した。

「折角だから夕飯をどこかで食べよう」

「まだ夜おそくなれないから、今日は失敬します。家へ来てくれ給え、家ならいつまででもいい」

廊下へ出ると、阪部が立ち止った。

「ああ一寸待ち給え、あげるものがある」

阪部は下駄を廻してくれと云って、中庭へ下りた。戻って来た時、彼の手頸三四寸、水につかった部分だけ、冷たそうに真赤になっていた。

「なに」

「東京では珍しいものです、毬藻」

玄関の板敷に立って、彼は帳場から出させた紙でそのビロードでこしらえたような丸い藻を包み伸子に渡した。

九

縁側に手をついて、伸子は背の高い硝子壜の中を覗いていた。壜の水に阪部のくれた毬藻が沈んでいた。

「――何だかこれ色がわるくなってきたようね、一向浮き上らないじゃあないの」

「そうですか」

「そんなにいつまでも栄養が内にあるもんでしょうか?」

「さあ……」

間を置いて、伸子がたずねた。

「阪部さん南洋へいつお立ちんなるの?」